2022年芒種の酒丸。

2022年芒種の酒丸。

 

 6月6日の芒種を過ぎました。

芒種とは、稲や麦など「穂の出る植物」の種を蒔く頃の事。

稲の穂先にある様な突起状の針を「芒(のぎ)」という事から

この名があります。

そしてこの頃から雨が増えてきます。

 

 さて、私はと言うと…

毎年恒例、名古屋店周年イベントに参加。

例年とは違い今回は割れ物の納品も兼ねていたので、

館山から自動車で一旦東京店に寄って荷物を積み込み、

その足で名古屋入り。

名古屋店ではいつもの様に多くのお客様に来ていただき、

感謝感激雨霰!

お陰様で搬入したヴィンテージラジオも、

大半が売れちゃいました。

残りは東京店に戻しましたが、

名古屋店で販売していた値段そのままで売るそうなので

是非チェックを。

 

そして別件で…

せっかく名古屋に自動車で行くのであれば、

是非とも行きたいところがありました。

名古屋店スタッフに無理を聞いてもらい、

周年イベント初日の土曜日午前中にちょいと中抜け。

それがここ、

友人が始めた「キドニーベルト専門店」の

スーベニア・レザー・ワークス!

店内には、オリジナルで作られたキドニーベルトがずらり。

キドニーベルトとは、

主にヴィンテージアメリカンバイク(リジット)に乗る際に腰に巻く、

内臓&脊椎保護の為のベルト。

その後バイクが進化してリアフォークがつく様になり、

このキドニーベルトというモノそのものも姿を消していきました。

が、

このキドニーベルトを今でも欲しいリジット乗りは存在しているし、

モノそのものも造詣が素晴らしく、

一つの文化としてアメリカンコレクタブル。

それをなんと!オリジナルとして復刻しているのです!!

すごい!!!

店内も至る所の造詣が凄い。

この照明なんて、本来は1900年代の車のランプ。

百聞は一見に如かず。

まずは見に行ってきてください。

 

 

そして今回は…

ちょっとセーターとカットソーの関係について、

企画生産担当として文章を書いてみようかと思います。

 

その昔、まだカットソーなんて物体も言葉も無かった頃…

伸縮性があって暖を取れる衣料とは、セーターでした。

セーターとはSWEATERと書き、

その名の通り「スエット(汗)の人」という意味です。

つまり防寒着。

元々は手編みだったものが、

様々なニッティングマシーンの開発により

色んな柄出しができる様になってきました。

例えばこれは、アーガイル柄ジャカードセーター。

ジャカード編機という機械を使って編みます。

スペルはJACQUARDと書きます。

よく「ジャガード」と、

猫科猛獣の過去形みたいに読んでる人がいますが間違いです。

そしてジャカード編みの特徴は、

表に出てくる色の裏に次の柄の糸が沈んでいく事。

例えばこの写真のワイン色のセーターの場合、

ワイン色以外の黒、黄色、白の糸も裏側に存在しているのです。

つまり、それだけ糸を大量に使うので暖かい。

逆に言えば、糸量が多いので割高なのです。

ところが1950年代には、

こういった「編み地柄としてのアーガイル」を

プリントにして安価に大量に作る事が大流行します。

今でこそロックンロールなジャケットですが、

当時はレーヨンというしなやかで艶やかな素材を用いた、

最先端のスポーツジャケットとして登場しました。

 

 一方のカットソーとは。

二十世紀初頭、

ニッティングマシーンで編んだ編み地を裁断し、

縫製する事で大量生産できる様になりました。

但し元々はあくまで

「セーター生地を裁断して縫製する大量生産型の廉価防寒着」

なので、

無地の肌着が圧倒的に多かったのです。

つまりカットソーとはCUT&SAWN(カット&ソーン)と書き、

裁断して縫製する、という意味なのです。

まぁ、いわゆる「下着としてのTシャツ」の完成です。

 

この大量生産で廉価な防寒着、

という部分に目を付けたのが「軍」でした。

第一次世界大戦では、

自国の兵士に大量配布しなければならない為、

全世界で生産がフル稼働しました。

その為、所属を意味する簡単なプリントが施されました。

例えばこんな感じ。

ご存じ、U.S.NAVYのプリントTシャツです。

このプリントは…

こういったジャケットやボトムのプリントと並行して

行われました。

そしてその後、

戦争が終わった後も「所属を証明するアイテム」として、

プリントTシャツは各地で重宝されていきました。

例えばこんな感じ。

あくまで架空の団体ですが…

TRAGEDY ACADEMY演劇学校的な意味合いでしょうか。

 

 そんな所属を証明するプリントカットソーでしたが…

第二次世界大戦後のアメリカでは、別の進化も起こりました。

世界各国に散らばっていた兵士達が母国アメリカに帰還し、

恩給をもらう様になり…

リゾートやスポーツなど「余暇の使い方」が、

一気に多様化する時代になりました。

よって防寒着として進化したセーターも…

糸をウールからコットンに変え、

太番手から細番手に変えて

夏用リゾートウエアとして企画される様に。

例えばこんな感じ。

サマーセーターのオクトパス

柄のアップ。

表に出ている色糸じゃない糸は、背面に回ります。

これはダブルジャカードという編み方で、

さほど糸量は多くなりません。

こういった開発が、夏物に向けて盛んになりました。

 

そしてその後、先ほどのアーガイルと同様に、

カットソーにジャカードの柄をプリントする、

という製法がとられるようになっていきました。

ヴィンテージのプリントサマーセーター、シャーク&マン。

同じくヴィンテージのサマーセーター、ピューマ。

 

そんなヴィンテージ達を背景に、満を持してのオリジナル。

プリントサマーセーター「カクタス」!

よく見てもらえればわかりますが、

表面はミニ裏毛の様なパイル生地。

プリント図案は、

ヴィンテージハワイアンシャツで有名なサボテン&テンガロン!

袖や背面は同素材切り替え。

リブは針抜き。

 

今回のブログは、

1940~50年代初頭のアメリカの、

セーターからカットソーへの変遷を自社商品でなぞるという…

不思議なことをしてみました。

こうして文字化しておく事で、

歴史的認識が広がれば良いと思います。

 

あ、そうそう。

こんな、所属を証明するプリントTシャツもありますよ。

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