6月6日の芒種を過ぎました。 芒種とは、稲や麦など「穂の出る植物」の種を蒔く頃の事。 稲の穂先にある様な突起状の針を「芒(のぎ)」という事から この名があります。 そしてこの頃から雨が増えてきます。 さて、私はと言うと… 毎年恒例、名古屋店周年イベントに参加。 例年とは違い今回は割れ物の納品も兼ねていたので、 館山から自動車で一旦東京店に寄って荷物を積み込み、 その足で名古屋入り。 名古屋店ではいつもの様に多くのお客様に来ていただき、 感謝感激雨霰! お陰様で搬入したヴィンテージラジオも、 大半が売れちゃいました。 残りは東京店に戻しましたが、 名古屋店で販売していた値段そのままで売るそうなので 是非チェックを。 そして別件で… せっかく名古屋に自動車で行くのであれば、 是非とも行きたいところがありました。 名古屋店スタッフに無理を聞いてもらい、 周年イベント初日の土曜日午前中にちょいと中抜け。 それがここ、 友人が始めた「キドニーベルト専門店」の スーベニア・レザー・ワークス! 店内には、オリジナルで作られたキドニーベルトがずらり。 キドニーベルトとは、 主にヴィンテージアメリカンバイク(リジット)に乗る際に腰に巻く、 内臓&脊椎保護の為のベルト。 その後バイクが進化してリアフォークがつく様になり、 このキドニーベルトというモノそのものも姿を消していきました。 が、 このキドニーベルトを今でも欲しいリジット乗りは存在しているし、 モノそのものも造詣が素晴らしく、 一つの文化としてアメリカンコレクタブル。 それをなんと!オリジナルとして復刻しているのです!! すごい!!! 店内も至る所の造詣が凄い。 この照明なんて、本来は1900年代の車のランプ。 百聞は一見に如かず。 まずは見に行ってきてください。 そして今回は… ちょっとセーターとカットソーの関係について、 企画生産担当として文章を書いてみようかと思います。 その昔、まだカットソーなんて物体も言葉も無かった頃… 伸縮性があって暖を取れる衣料とは、セーターでした。 セーターとはSWEATERと書き、 その名の通り「スエット(汗)の人」という意味です。 つまり防寒着。 元々は手編みだったものが、 様々なニッティングマシーンの開発により 色んな柄出しができる様になってきました。 例えばこれは、アーガイル柄ジャカードセーター。 ジャカード編機という機械を使って編みます。 スペルはJACQUARDと書きます。 よく「ジャガード」と、 猫科猛獣の過去形みたいに読んでる人がいますが間違いです。 そしてジャカード編みの特徴は、 表に出てくる色の裏に次の柄の糸が沈んでいく事。 例えばこの写真のワイン色のセーターの場合、 ワイン色以外の黒、黄色、白の糸も裏側に存在しているのです。 つまり、それだけ糸を大量に使うので暖かい。 逆に言えば、糸量が多いので割高なのです。 ところが1950年代には、 こういった「編み地柄としてのアーガイル」を プリントにして安価に大量に作る事が大流行します。 今でこそロックンロールなジャケットですが、 当時はレーヨンというしなやかで艶やかな素材を用いた、 最先端のスポーツジャケットとして登場しました。 一方のカットソーとは。 二十世紀初頭、 ニッティングマシーンで編んだ編み地を裁断し、 縫製する事で大量生産できる様になりました。 但し元々はあくまで 「セーター生地を裁断して縫製する大量生産型の廉価防寒着」 なので、 無地の肌着が圧倒的に多かったのです。 つまりカットソーとはCUT&SAWN(カット&ソーン)と書き、 裁断して縫製する、という意味なのです。 まぁ、いわゆる「下着としてのTシャツ」の完成です。 この大量生産で廉価な防寒着、 という部分に目を付けたのが「軍」でした。 第一次世界大戦では、 自国の兵士に大量配布しなければならない為、 全世界で生産がフル稼働しました。 その為、所属を意味する簡単なプリントが施されました。 例えばこんな感じ。 ご存じ、U.S.NAVYのプリントTシャツです。 このプリントは… こういったジャケットやボトムのプリントと並行して 行われました。 そしてその後、 戦争が終わった後も「所属を証明するアイテム」として、 プリントTシャツは各地で重宝されていきました。 例えばこんな感じ。 あくまで架空の団体ですが… TRAGEDY ACADEMY、演劇学校的な意味合いでしょうか。 そんな所属を証明するプリントカットソーでしたが… 第二次世界大戦後のアメリカでは、別の進化も起こりました。 世界各国に散らばっていた兵士達が母国アメリカに帰還し、 恩給をもらう様になり… リゾートやスポーツなど「余暇の使い方」が、 一気に多様化する時代になりました。 よって防寒着として進化したセーターも… 糸をウールからコットンに変え、 太番手から細番手に変えて 夏用リゾートウエアとして企画される様に。 例えばこんな感じ。 サマーセーターのオクトパス。 柄のアップ。 表に出ている色糸じゃない糸は、背面に回ります。 これはダブルジャカードという編み方で、 さほど糸量は多くなりません。 こういった開発が、夏物に向けて盛んになりました。 そしてその後、先ほどのアーガイルと同様に、 カットソーにジャカードの柄をプリントする、 という製法がとられるようになっていきました。 ヴィンテージのプリントサマーセーター、シャーク&マン。 同じくヴィンテージのサマーセーター、ピューマ。 そんなヴィンテージ達を背景に、満を持してのオリジナル。 プリントサマーセーター「カクタス」! よく見てもらえればわかりますが、 表面はミニ裏毛の様なパイル生地。 プリント図案は、 ヴィンテージハワイアンシャツで有名なサボテン&テンガロン! 袖や背面は同素材切り替え。 リブは針抜き。 今回のブログは、 1940~50年代初頭のアメリカの、 セーターからカットソーへの変遷を自社商品でなぞるという… 不思議なことをしてみました。 こうして文字化しておく事で、 歴史的認識が広がれば良いと思います。 あ、そうそう。 こんな、所属を証明するプリントTシャツもありますよ。